日銀、量的緩和を解除 所得280兆円が家計から企業へ
ゼロ金利は当面維持
~日経新聞 2006/03/10 1 面から
日銀は9日の政策委員会・金融政策決定会合で、2001年3月に導入した量的
金融緩和政策の解除を決めた。消費者物価指数が安定的に前年比ゼロ%
以上になるなどの解除条件が整ったと判断した。解除後に市場の動揺を
防ぐための政策運営の目安になる市場安定化策も調整が一時難航したが、
合意したもよう。日本の金融政策は5年ぶりに正常化に向けた一歩を踏み
出す。
●● 日本銀行の、5年ぶりとなる大きな方針転換です。
5年間続いた量的緩和政策によって、日本の資産構造は大きく
変化しました。
最も大きな資金の流れは、家計から企業へ流れた資金です。
本日の日経紙4面にある、三菱総合研究所の試算によれば、この15年で、
およそ280兆円の資産が、家計から企業へと移りました。
この280兆円という金額は、本来、家計が得られた利息を削り、
企業にゼロ金利にて貸し出しを実施した結果発生したものです。
たとえば、先日、空前の好決算を発表した三菱東京UFJ銀行の場合、
2005年4~12月期連結決算において、税引き後利益は1兆円を超え
ました。
一方、同行の預かり預金総額は120兆円。
そのうち、個人客からの預金総額は、およそ半分の60兆円にのぼり
ます。
仮に、全ての個人向け預金に年利1%の金利を支払った場合、支払う
利息の総額は0.6兆円。
空前の利益額となった1兆円の60%に相当する金額があっという間に、
吹き飛ぶ計算です。
預金の総額である120兆円に同様の利息を支払った場合には、利益は
消失し、決算は、赤字となってしまいます。
こうしてみると、今期、三菱東京UFJ銀行が稼ぎ出した利益は、本来
預金者が得られる利息が、銀行側に移ったものだといえます。
そして、このような状態は、少なくとも、ゼロ金利政策が導入された
1999年以降、7年間続いてきています。
今回の日銀の転換は、量的緩和政策の解除であり、ゼロ金利政策は、
今後も当面維持されます。
量的緩和政策によって実施されたのは、市場への資金供給です。
量的緩和政策導入当時、およそ4兆円だった資金供給量は、30兆円
程度にまで増えました。
まずは、この資金供給量の増加をやめるというのが、今回発表された
政策です。
そのため、預金金利が上昇を始めるのはまだ先のことになるでしょう。
まだまだ家計にとっては厳しい時代が続きそうですが、正常な金利の
復活に向け、舵が切られたことだけは間違いないようです。
《関連Webサイト》 日本銀行
http://www.boj.or.jp/