警察庁、DNAデータベース化
運用のあり方で議論も
~日経新聞 2004/10/07 社会 面から
警察庁は今年中に、都道府県警が犯行現場などで採取した血液や毛髪など
から得た「DNA型情報」をデータベース化し、捜査に活用する方針を
決めた。これと照合するため、容疑者から得た型情報も同様にデータ
ベース化したい考えで、今後、専門家の意見を聞くなどして検討を
進める。同庁はこうした方針を7日開く国家公安委員会に報告し、
了承を得る。
●● ここ数年、日本国内の犯罪件数は増加の一途を辿っています。
一方、警察庁が発表している、犯罪の検挙率は、25%程度と低迷
しています。
犯罪が起こっても、4人に1人しか犯人が捕まらないという数字
です。
巧妙化、悪質化する犯罪に、いつまでたっても指紋鑑定だけでは
追いつかない部分も多いと思います。
そこで、警察庁は、「指紋以来の有力な捜査の武器」とするDNA
認証の導入に踏み切る方針を固めたようです。
DNAは、A(アミン)、G(グアニン)、C(シトシン)T(チミン)
の4種類の塩基の組み合わせから成り、人間の場合、約30億個の
塩基の配列から構成されています。
いわば、生命体の設計図であり、生命体のどの細胞にもDNAが
存在します。
そして、ひとつの生命体が持つDNAは、すべて同一の塩基配列
からなり、一生涯不変であるとされています。
生命体の設計図ともいえるDNAは、他の個人情報とは比較になら
ないくらい重要な情報といえます。
警察庁によれば、データベース化する「DNA型情報」は、塩素配列
を数値化して処理するため遺伝情報は含まれないとしていますが、
その型情報を採取した血液や唾液などが、データベースとの関連
付けが残ったまま保存された場合、その生体の一部からDNAの
全情報が流出したり盗まれたりする危険性は十分残ります。
現状では、DNA情報を盗難された場合、実質的な損害はどちらかと
いうと軽微といえるでしょう。
実質的な損害は、キャッシュカードやクレジットカード番号などを
盗難されたケースの方が、よぽど大きいといえます。
その気になれば、髪の毛一本からでもDNA情報は盗めるわけであり、
特定の人のDNA情報を盗むために、わざわざ警察庁のデータベースに
侵入する必要性は低いといえます。
ただ、DNA情報が流出・盗難された場合、被害者の精神的な苦痛は
大きいといえます。
また、重要な個人情報が、データベース化され、他者に管理されて
いるということ自体、気持ちのいいことではありません。
犯罪の抑止や検挙率の向上に大きく貢献できると考えられるDNAの
データベース化ですが、慎重かつ詳細な議論が必要だといえる
でしょう。
《関連Webサイト》 警察庁セキュリティポータルサイト@police