音楽・映画交換ソフト――米最高裁「著作権を侵害」
開発会社の責任認める
~日経新聞 2005/06/28 1 面から
米連邦最高裁は二十七日、インターネット上で音楽・映画ファイルを無料
交換・共有する技術が著作権侵害行為を助長しているとして、共有ソフトの
開発会社に著作権侵害の責任を認める判決を下した。
技術革新と著作権保護の関係を問いかけ注目されていたこの裁判の結果が、
ネット上の娯楽コンテンツの流通に大きな影響を与えるのは必至。共有
ソフトの開発には一定の歯止めがかかるとみられ、娯楽業界は違法
コピー撲滅につながるとして歓迎している。
小説
盛田昭夫学校
https://www.iw-jp.com/am.php?id=4833418207
●● 技術革新か著作権保護か。
長年にわたって裁判で争われてきた両者の関係は、ついに、技術
革新よりも著作権を保護するという判決が、米最高裁にて下される
ことになりました。
これまでの両者の関係では、技術革新が優先されてきました。
この技術革新優先を決定づけたのは、1976年にソニーが米映画会社
に訴えられた「ベータマックス訴訟」です。
この時、ソニーが訴えられたロジックは下記の通りです。
1.映画は製作者側の著作物
2.著作権を持つということは、複製の独占権を持つということ
3.著作者でない個人消費者が勝手にテレビ映画を複製するのを可能
にする家庭用VTRは、必然的に複製権の独占の侵害、
つまり著作権の侵害となる
4.その侵害行為を行うVTRを実際に使用した個人はもちろん、
それを製造・販売するソニーは侵害行為に寄与している
これに対して、ソニー側は、下記の点を主張しました。
1.家庭用VTRは、一般大衆が受信機を持ってさえいれば、本来
見られる番組を単に時間帯を変えて見られるようにしているに
過ぎない、つまり「放送の延長」であり「複製」ではない
2.さらに、公衆の電波はより多くの人に情報を伝達するために
与えられた公衆の資産である。そこに情報を乗せた以上は、
多くの人に情報を伝えるための道具であるVTRの存在も認める
べきである
これは、「タイムシフト」と呼ばれるソニーの主張でした。
この訴訟では、ソニー側が地裁で勝訴、高裁で逆転敗訴となり、
今回の訴訟のように、最終判断は最高裁に委ねられました。
1984年1月、8年にわたって争われた裁判の結果、最高裁が出した
判決は、5対4というソニーにとってきわどい勝訴でした。
判決理由は、「無料テレビ放送の電波から家庭内でビデオ録画を
行うことは、著作権侵害には当たらない。メーカー側に一切法的
責任なし」というものでした。
この「ベータマックス訴訟」の判決を根拠に、世界の家電各メーカー
は、音楽や映像の保存機器を開発・販売することが可能となりました。
その訴訟の判決が逆のものであった場合、映像や音楽を私的に保存して
楽しむ行為ができる機器の製造販売は法律違反となり、現在のような
各種デジタル機器の発展もなかったでしょう。
今回の裁判では、録画できる機器が対象ではなく、デジタル情報で
保存した音楽や映像のデータを、共有・交換できるソフトの開発が
著作権侵害行為にあたるかどうかが争点とされました。
最高裁の判決では、全員一致でソフト開発業者の開発行為は、著作権
侵害行為にあたるというものでした。
ベータマックス訴訟から20年あまり。
技術革新よりも著作権保護を優先とする判決が下された瞬間です。
実際、このようなファイル交換ソフトが出回ってから、特に音楽業界で
CDなどの売上が激減しています。
今回、明確な判決が出たことで、今後、ファイル交換ソフトの普及は
止っていくことになるでしょう。
音楽・映画などの娯楽業界にとって、大きな朗報であることは間違い
ありません。
ちなみに、今回の裁判でソニーは、著作権保護側にて再び勝訴すること
になりました。
《関連Webサイト》 SONY
BMG MUSIC ENTERTAINMENT http://www.sonybmg.com/