新生銀株売り出し価格525円 売却収入まず2200億円
米リップルなど外資系
~日経新聞 2004/02/10 3 面から
経営破たんした旧日本長期信用銀行を引き継いだ新生銀行は9日、株式上場に
伴う売り出し価格を525円に決定したと発表した。国内外の投資家の人気が
高く、仮条件で示した価格帯の上限で決まった。米リップルウッド・ホール
ディングスなど新生銀に出資した外資系金融機関は今回の株売却だけで
約2200億円と投資資金の倍近くの収入を得る。
●● 見出しだけ読んでいると、外資系投資会社リップルウッドが大きな
成功を収めたように見えますが、事実はそんなにシンプルではあり
ません。
新生銀行は、今回決まった売り出し価格を基に計算すると、上場後の
時価総額は約7,000億円となります。
これは、銀行全体でも8位の規模であり、都市銀行を除けば、3位と
いう規模の銀行となります。
この時価総額7,000億円は、リップルウッドが投資した金額からみると
非常に大きな数字です。
4年前の2000年3月、経営破綻し国有化されていた日本長期信用銀行を
リップル社が譲り受けた時の投資金額は、1,210億円。
投資した金額が、4年でおよそ6倍になった計算です。
リップル社は今回の上場に際し、持ち株の30%程度を売り出します。
その売却額はおよそ2,200億円。
今回の売却だけで、投資額の200%というリターンを得ることになる
のです。
しかし、この時価総額7,000億円を、国が負担した公的資金による
援助金額からみると、決して大きな数字ではありません。
旧長銀の破綻処理に投入された公的資金の総額は、7.8兆円。
新生銀行時価総額の実に11倍という巨額です。
そのうち、預金者保護などのために旧長銀に投入された公的資金
約3.6兆円は全額国の損失になります。
当然ですが、公的資金のほとんどは国民の税金が使われています。
そのため、旧長銀に投入された損失額は、その全額が国民の負担
です。
旧長銀に投入された3.6兆円は、国民一人当たり、3万円の負担と
いう計算になります。
国がリップル社に旧長銀を譲渡する際に保証した「瑕疵担保条項」
などが現在、政界や財界などで問題視されていますが、これらの
負担額もすべて含めると、旧長銀処理に関する公的資金投入に
よる損失額は4~5兆円に上ると見られています。
こうしてみると、国民一人当たり4万円の負担で、国民一人当たり
6,000円程度の一企業を救ったという計算になります。
しかも、投資金額に対するリターンを得るのは、1,210億円を
投じたリップル社だけなのです。
米企業が日本企業や日本政府に比べ、数年進んでいるというのは、
残念ながら事実であるようです。
今回の新生銀復活劇から多くのことを学べると思います。
《関連Webサイト》 新生銀行 http://www.shinseibank.com/