経常収支日本は赤字転落も
IMF 高齢化で労働力不足
~日経新聞 2004/09/24 3 面から
国際通貨基金(IMF)は22日、日本で今の勢いで少子高齢化が進み労働力
人口の不足が深刻になると経済成長率が低下し、2020年ごろには経常収支が
赤字に転落しかねないと警告する報告書を発表した。労働力不足を防ぐため
に、移民の受け入れや定年引き上げなどの政策の実行を日本に求めている。
●● 日本の少子高齢化は、世界的な懸念事項になりつつあります。
IMFは、少子高齢化による労働力不足の影響について、日本が先進国
のなかで最も深刻になると予測しています。
先日、弊誌でも他の先進国の少子化対策の例を取り上げましたが、
日本は完全に遅れています。
というよりも、年金の改革など、「高齢化」の表面的な対策に終始し、
「少子化」に対する根本的な対策は全く実施していません。
IMFの警告によれば、およそ15年後の2020年ごろには、日本の経常収支
は赤字に転ずる可能性があるということです。
早急な対策を実施しない限り、この流れは変わらないでしょう。
そして、2020年に赤字転落したあとは、過去の資産を食い潰すしか
なく、日本はそのままジリ貧に陥ることになります。
IMFは、国際機関にしては珍しく、アメリカのワシントンに本部を置く
組織です。
戦後の1944年に設立され、日本は1952年に加盟しています。
現在、IMFの資産額はおよそ2000億ドル。
日本は、100億ドル強を出資し、米国に次ぐ第2位の出資大国になって
います。
現在IMFの主な役割は、発展途上国への援助的な融資活動です。
数年前に起きた、韓国の通貨危機の際にも、IMFは、600億ドルという
史上空前の巨額融資を実施しました。
韓国はその後数年で経済を立ち直し、IMFからの融資も前倒しで完済
しています。
IMFにとって見れば、日本という出資国が融資先に化けてしまう事態は
避けたいところでしょう。
しかし、統計上の予測では、日本はこのまま進むと、融資先に化ける
可能性が十分にあります。
今回のIMFの警告は、客観的な指摘として、大きな意味を持ちます。
しかし、残念ながら、日本全体が本気で少子化対策に動き出すまで
には、まだ切迫した危機感が足りないようです。
《関連Webサイト》 IMF http://www.imf.org/