親子3代、財布はひとつ
所得移転が加速
~日経新聞 2004/08/27 1 面から
いま30歳のサラリーマンは、普通に暮らすと63歳で貯蓄が底をつき、家計は
実質的に破たんする――。こんな予測がある。
前提は「標準」の家庭だ。年収500万円、同い年の妻は専業主婦。1歳の長男
がおり、3年後に長女が生まれる。31歳で車、35歳で3000万円のマンション
を買う。子供たちは大学まで進む……。
伸びない賃金と減る年金、老後資金を蓄える期間は短く、社会保障や教育
負担はより重い。61歳から年間収支は赤字。夫婦とも85歳まで生きれば、
2700万円の借金が残る。東京FPコンサルティングの紀平正幸が試算した。
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●● 弊誌でも度々取り上げていますが、今後、日本が最も危惧すべき
問題は「少子化」です。
今朝の日経記事の試算も、育てる子供を1人にすれば、生涯の収支は
ほぼ、とんとんになり、2700万円という大幅な赤字は解消できます。
子供を多く育てるほど、将来の不安が増す。
数字上で見れば、一般的なサラリーマン家庭の場合、子供を2人以上
育てると、増えた子供の数だけ生涯収支は大幅な赤字になります。
こうした実情を、多くの人が直感的に感じ取り、ますます少子化が
進んでいるような気がしてなりません。
昨年発表された日本の出生率は、史上最低の1.29でした。
毎年、政府の予測を大きく下回る水準で推移しています。
この出生率を、政府は今後数年で下げ止まると予測していますが、
これまでの傾向から見て、政府予測はほとんど根拠のないものと
考えられます。
そして、政府は、この少子化の進行を見過ごし、完全に対策を怠って
います。
将来起こりうる大きな問題を先送りして、目の前に迫った問題の解決
に注力しているといえます。
もしくは、自分たちの世代の問題にしか興味がないのかもしれません。
このままいくと、現在の子供世代には、莫大な借金のみが残る可能性
が極めて高いのです。
記事の試算によれば、現在の30歳代の一般的なサラリーマン世帯では、
子供2人を育てると、生涯で2700万円の借金を抱えます。
その親世代が、生涯収支で800万円のプラスとなりますが、2世代で
合算した収支は、1900万円の赤字となります。
普通に考えれば、この借金は、そのまま次の世代に負債として残る
ことになります。
高齢化が進み、労働人口が減少した日本で、この負債を抱えることが
できるのでしょうか。
海外に目を向けてみると、欧州などでは、政府の少子化対策が功を
奏し、出生率の回復を遂げてる国が多くあります。
フランスでは、出生率が1.6まで落ち込んだ段階で、GNPの2%を
少子化対策に当てるという強力な対策を実施し、10年で1.9にまで
引き上げました。
今、フランスは、ベビーブームに沸いています。
スウェーデンでは、手厚い育児休業と児童手当で、1.5から1.65まで
数年で回復しました。
一方、日本では、昨日発表された政府の一般会計概算要求でも、
新しい少子化対策案は見当たりません。
ライブドア社長の堀江氏は、近著の中で次のように言っています。
明治維新や終戦直後のように社会をリセットして、
20代・30代が社会を担うシステムに変えないと日本はダメになる。
■稼ぐが勝ち ゼロから100億、ボクのやり方 堀江 貴文 (著)
少子化の問題を考えると、この考え方は極めて正しいといえそうです。