エレベーター事故シンドラー本社会見、点検マニュアル渡さず
保守会社との連携に不備
~日経新聞 2006/06/13 3 面から
東京都港区のマンションのエレベーター死亡事故で、メーカーのシンドラー
エレベータ(東京・江東)のスイス本社幹部が十二日、事故後初めて記者
会見した。保守会社に事故機の点検マニュアルを渡していないことを明らか
にした上で、保守会社との連携不足を陳謝。その一方、自社製品については
「設計や構造に起因する事故は今まで一件もない」と強調した。事故原因と
責任の所在はあいまいなままだ。
●● 東京都港区で起ったマンションのエレベータ死亡事故に関して、
エレベータの保守に関する新たな側面が浮かび上がってきました。
マンション管理費用のコストダウンという要素です。
事故が起ったマンションでは、エレベーターの管理会社をここ
3年間、毎年変更していました。
当初、施行会社であるシンドラーエレベータが保守を行ってい
ました。
期間は、該当マンションの建設後6年間に相当します。
その当時の保守管理費用は年間およそ360万円でした。
2005年に、シンドラーエレベータから日本電力サービスに保守
業務委託先を変更。
そのときの保守管理費用は年間およそ170万円。
シンドラーの時の半分の数字です。
2006年には、さらに別の保守企業である、SECエレベータに保守
業務を委託。
そのときの保守管理費用は、年間およそ120万円。
シンドラーの時の、実に1/3という金額になっています。
事故発生当時、シンドラー社が発表した
「14ヶ月当社で保守をしていないエレベータで起きた事故」
というコメントは、このような保守管理の委託企業先の変更を
指していました。
今回の事故は、SECエレベータが保守を開始して2ヶ月後に発生した
事故になります。
関係3社は、WEBサイト上に今回の事故に関してコメントを掲載して
います。
シンドラーエレベータ http://www.schindler.co.jp/
日本電力サービス http://www.jeps.jp/
SECエレベータ http://www.secev.co.jp/
シンドラーエレベータは、マスコミなどでも度々報道されている
とおり、保守管理会社の責任が重いという内容のコメントとなって
います。
日本電力サービスは、哀悼の意を表しているのみです。
SECエレベータは、全面的に非を認め、謝罪していますが、
保守を行って「わずか2ヶ月」という内容の記載があります。
今回の会見により、シンドラーエレベータから、保守管理会社に、
点検マニュアルの提示や、講習会の実施など、一切の連携が無かった
ことが明らかになりました。
また、入札などにより、エレベータの販売・施行のみでは利益が
出にくく、保守管理で利益を上げていくというエレベータ製造企業の
構造も明らかになりました。
今回の事件は、氷山の一角である危険性が高いといえます。
事故の大きな原因として、エレベータの保守業務に関する構造的な
問題が浮き彫りにされてきています。
《関連Webサイト》 財団法人港区住宅公社
シティハイツ竹芝
http://www.minato-smile.or.jp/jutaku/chtakesiba.html