マクドナルド、定年廃止――年齢を問わず、働ける環境に
~日経新聞 2006/05/24 3 面から
日本マクドナルドは二十三日、六十歳定年制を廃止した、と発表した。実力
主義に基づく処遇を一歩進め、従業員本人に働く意欲があり会社が能力を
認めれば、六十歳を超えても年齢に関係なく働けるようにした。企業は今年
から、六十五歳までの段階的な雇用延長を義務づけられたが、定年制の撤廃
に踏み切ったのは大手で珍しい。
●● 定年廃止を選択する企業は、大手のみでなく、日本企業全体で見ても、
極めて少数といえます。
今年の4月から「改正高年齢者雇用安定法」が施行されました。
この法律により、企業は、段階的に65歳まで雇用を延長することが
義務づけられました。
企業が選択できる方法は下記の3つ。
定年の廃止
定年延長
継続雇用制度の導入
上にある方法ほど、雇用者に優しく、下にいくほど、企業寄りの方法で
あるといえます。
日経紙面にもありますが、従業員300人以上の企業1.2万社の調査結果
では、企業全体の93.6%が継続雇用制度を導入しています。
この継続雇用制度の場合、雇用者は、60歳で一旦定年となります。
そのうえで、企業と再度雇用契約を締結します。
その際、雇用者の賃金の改定が可能となります。
この継続雇用制度を導入した企業は、基本的に、60歳以上の雇用者の
賃金カットが前提になっているといえます。
定年延長は、基本的に、60歳までの雇用契約をそのまま延長すると
いう制度です。
この「改正高年齢者雇用安定法」が導入された経緯が、年金の支給
開始年齢引き上げに伴うものですので、定年の延長は、65歳までと
なっている企業が大半と考えられます。
これに対して、定年の廃止は、全く異なる概念の制度だといえるの
ではないでしょうか。
定年制度が廃止されることにより、雇用者は、雇用契約に違反しない
限り、いつまででも働き続けることができるのです。
雇用契約に違反しない限りというのは、主に、加齢により実務能力が
無くならない限りということになります。
定年制は、いわば、企業側の一方的なリストラ策といえます。
日本の一般的な企業では、高齢者は、給与水準は高いが、実務能力は
衰えてきているという実態があります。
定年という、一定年齢で解雇できる制度があることによって、年功序列
の賃金制度が守られてきた側面があります。
しかし、マクドナルドは、完全な職務賃金制度を導入しています。
そのため、賃金は、職務内容に応じた金額となっています。
この場合、年齢は意味がありません。
職務を遂行できる人間である限り、それに応じた賃金を支払うことが
できるのです。
年金の支給開始年齢の引き上げは、まだ今後も実施されるでしょう。
企業の雇用制度のあり方が問われています。
《関連Webサイト》 日本マクドナルド
http://www.mcdonalds.co.jp/