社員の健康管理、代行――明治安田が新事業
指導きめ細かく→発病予防で医療費抑制
~日経新聞 2004/10/15 7 面から
明治安田生命保険は松下電器産業、日本IBMと組み、契約した会社の
社員を対象に発病予防型の健康管理事業に乗り出す。来年度に三社共同
出資の新会社を設立する。専門家が要警戒の社員の健康改善度合いを
月1~3回は点検する体制が特徴で、米国で急拡大しているビジネスだ。
医療費が抑制でき、対象企業の健康保険組合の財務改善にもつながると
みている。
あたりまえだけど、とても大切なこと―子どものためのルールブック
https://www.iw-jp.com/amp.php?id=4794213204
●● 社員の健康管理が、企業側にとって重要な問題となってきています。
社員の肉体的・精神的健康が、会社の業績へ与える影響について、
十分に認知されている米国では、社員の健康管理やメンタルへルス
対策への関心が高くなっています。
米国では、EAP(Employee Assistance Program)と呼ばれる社員の
業務上もしくは個人的な問題の発見および解決をサポートし、企業
全体の生産性の向上を支援するメンタルヘルスプログラムが、既に
FORTUNE誌トップ500企業のうち、約95%の企業で導入されています。
日本はこの分野では、米国に大きく遅れているといえます。
最近、日本でも、社員の健康と企業の業績に関する調査結果が
いくつか報道されるようになって来ており、国民の関心が
高まってきているようです。
先日の厚生労働省が公表したメンタルヘルスに関する調査結果は
次のようなものです。
心の病で一カ月以上休む労働者の比率は0.5%前後に上り、中小
企業ほど多い
平均の休職期間は5.2カ月
心の病で休職している労働者が約47万人で、賃金ベースの損失は
年間約1兆円と推定
全ての社員が非喫煙者であることを達成したアイ電気設備が次の
ような報告をしています。
年収550万円の社員の場合
労働時間内の喫煙が6本とすると1日5分×6本=30分の喫煙時間
労働日数年間270日における賃金の損失は約40万円
たばこが原因による病気を年3日欠勤で約6万円
たばこが原因の建物、設備などの管理維持費用で約6万円 など
合計すると1年間で喫煙者一人あたりおよそ53万円の損失を会社
がしていることになる。
国立保健医療科学院の推計では、たばこに起因する国内の死亡数は
年間9.5万人で、全死亡数の一割に相当。
たばこの害で余計にかかった医療費は約1.4兆円、入院生活や死亡
によって社会的に失った経済的損失は約5.8兆円で、合計約七兆円。
たばこ税収をはるかに上回る損失が発生していると指摘。
米国の医療機関の調査では、次のようなものもあります。
非喫煙者の仕事の効率を示す数値は、喫煙者より5%以上高い
喫煙者の欠勤日数は、吸わない人の3倍
たばこをやめた人は両者の中間
効率が落ちるのは、たばこを吸えずにイライラする時間が
多いことや、喫煙のために職場を離れる時間が長いことが原因
たばこという、分りやすい対象を使った調査が多くなっていますが、
生活習慣病や日常の疾病などによる社会的な損失は、たばこによる
損失をはるかに上回ると予測できます。
今回記事になった事業は、健康診断で健康に不安があるとされた
全社員の5%程度の人が対象となっていますので、発病の予防とはいえ
かなり事後対策的な面が強いといえます。
事後の対策にコストがかかる前に、事前の予防策に費用をかけたほう
が、企業の業績に貢献することが各種調査結果から導き出され
つつあります。
このことが社会的に確実に認知されるようになれば、多くの企業でEAP
のような制度の導入につながるといえます。
今後、日本でも急拡大するビジネス分野だといえそうです。
《関連Webサイト》 日本EAP協会 http://plaza.umin.ac.jp/~eapaj/