診療報酬汚職、医療改革に影響必至
中医協見直しも
~日経新聞 2004/04/16 4 面から
医療費(診療報酬)改定を決める中央社会保険医療協議会(中医協)を舞台
にした贈収賄事件が発覚した。日本歯科医師会会長らが業界に有利な改定を
期待して元社会保険庁長官ら委員に約三百三十万円相当のわいろを渡したと
される。医療費を負担する患者や企業は蚊帳の外で、官僚、政治家、関係
団体が密室で決める構図だ。医療費決定の透明度向上へ向けた見直しは
避けられない。
●● イラク邦人人質事件の報道に隠れ、あまり大きな国民の関心を呼んで
いない日本歯科医師会会長らによる診療報酬汚職ですが、日本の今後
の医療費改革に大変大きな影響を与える事件だといえます。
この事件は、まさに絵に描いたような贈収賄事件です。
贈賄側は、日本歯科医師会会長(日歯)の臼田貞夫容疑者(73)。
収賄側は、元社会保険庁長官、下村健容疑者(73)と連合副会長、
加藤勝敏容疑者(59)。
収賄側の2容疑者は、診療報酬改定を行う中央社会保険医療協議会
(中医協)の委員で、それぞれ、健保・労組という、医療費を負担
する側の代表でした。
当然、贈賄側の日歯とは、利害が対立する立場にあります。
昨今のデフレ下では、医療費を引き上げたい医療側と、医療費を引き
下げたい健保・労組など医療保険側の対立が続いていました。
その結果、今回の贈収賄事件が起きました。
日歯から賄賂が渡された2001年、医療保険側で、強硬に医療報酬の
引き上げを拒否し続けてきた下村容疑者が、収賄が行われた時期を
前後して、一転、医療報酬の引き上げを容認するような発言を始め
ました。
医療保険側の急先鋒であった、下村容疑者の発言を受けて、中医協
は医療報酬引き上げに傾き、結局、初診料の条件緩和という、
実質的な引き上げ容認へと動きました。
日経記事にあるように、診療報酬を全体で1%引き上げると、国民
医療費は約3,000億円膨らみます。
今回発覚した贈賄額は、下村・加藤両容疑者に、合計で300万円強
という金額でした。
たった300万円、2人のエリートが潤った結果、国民は巨額の医療費
負担増を強いられたといえるでしょう。
ただ、この事件の発覚で、中医協という密室での診療報酬改定には
大きな問題があるということが判明したといえます。
医療費改定の際、毎年医療側が主張する「医療機関の経営は苦しい」
と言う意見の真偽は、多くの国民が感覚的に判っているところなの
ではないでしょうか。
《関連Webサイト》 日本歯科医師会